2017.12.05
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SHEROS – ファッションの地原宿で繰り広げるフェミニズム

カード・キャリイング・フェミニスト

Lamp harajuku (ランプ ハラジュク)で「SHEROS(シーローズ)」という「自分たちの女性ヒーローに手紙を書く」参加型のアートプロジェクトの展示が始まっています。表参道を少し入った瀟洒な空間のお洋服屋さんで、フェミニズムは可能なのか?原宿のファッションのお店に「フェミニズム」を持ち込んだ二人のキュレーター、ハンナ・フシハラ・アーロンさんと、ジェニファー・アームブラストさんに彼女達の考えるフェミニズムのお話を聞いてみました。(クラークソン瑠璃)

 

 

SHEROS — 参加型アート企画のめざすこと

 

瑠璃:初めてSHEROSについて聞いた時、原宿でフェミニズム?と驚きました。このプロジェクトの発端を教えてください。

 

ハンナ:Lamp harajukuのディレクターが、ジェニファーの主催する「カード・キャリイング・フェミニスト」というプロジェクトに興味を持ったのが発端です。「カード・キャリイング・フェミニスト」は、ジェニファーが「フェミニズムを再生したい、もう一度自分たちのものとして取り戻したい」という目的で作ったアート・グッズです。

「フェミニスト」とプリントされたカードをジェニーのウェブサイトから$8で買うことができ、instagram やtumblrに自分がカードをもった写真をアップしてもらい、連帯感を生むようなプロジェクトです。いろんな人種や年齢、男女の写真がアップされてきています。一般の人にひらかれた、インクルーシブ(包括的)なことが重要なポイントだと思い、Lampで行う展示もインクルーシブにしたかったですし、また、Lampに来るお客さんが、落ち着いたゆったりした気分で楽しめる展示である必要がありました。色々考えたあげく、自分たちの女性ヒーローに手紙を書く、というアイディアにたどり着きました。

 

瑠璃 : 手紙は誰に書いてもらうことにしたんですか?

 

ハンナ : 知り合いのアーティストやクリエーターなどいろんな背景をもつ人に、参加を呼びかけ、Lampの展示では40人の人が参加しています。そして、来場したお客さまに参加してもらうため、手紙を書く用紙を用意して、どんどん会期中に増えていっています。今後展示をニューヨークとポートランドに巡回する企画が立ち上がっているので、様々な文化を持つ人々が書くことがどう違うか、楽しみです。意外と、どこか似ているんじゃないかなと思っています。

カードとともにタンブラーに投稿された写真

Lamp harajukuでのSHEROS展示の様子

瑠璃 : 美しい作品が多くて楽しい気分になる空間でした。けれど、例えば、DVや性的虐待、慰安婦や女の子の就学率の低さなど、緊急性のある問題にとりくんでいないじゃないか?SHEROSの企画は結局浮ついていてファッショナブルなだけでは?というように見る人がいるかもしれません。それに対してはどう答えますか?

 

ハンナ : 浮ついている、というか、柔らかである、というのは、逆にこの展示のねらいでもあります。Lampのお店にくる20〜30代の女性に対して、いきなり重量級の問題 ―例えばDVを投げかけたらどうでしょう?フェミニズムに慣れていない、またそういった問題を公の場で語ることに慣れていない人は怖いだけかもしれません。

それよりは来場者が安心して参加でき、そして気づきの可能性を提供する場にしたいと思っています。

でも、例えば参加者が、自らの女性ヒーローや自らが抱える、よりヘビーな問題について書く場合もあるでしょう。それは参加する人の自由で、開かれています。何を書いても私たちの目的はそれの善し悪しを判断することではありません。男性も女性も、自らの女性ヒーロにたいして手紙を書くため、ポジティブな面を強調できる場ではあります。

 

ジェニファー : そういう人の言ってることはわかる。確かに生死に関わるような問題の解決は非常に重要です。ですが、心の中に尊厳や自己や他者への尊重の場を作ることも同等に必要なことだと思います。

他者の存在の価値や尊敬できるところを観察する時間を設けることは、力強いエンパワメントの方法だと思います。だから、参加者の中には自分の弱みをさらけ出し、例えば結婚生活が上手くいっていないことや、母が死の床にあることついて書いている人もいました。

このプロジェクトはエンパワメントに重きをおいているといえるでしょう。アクティビズムや政治的な方向性ではなく、自分の尊厳について考える場であったり、女性であることの可能性について自信を持ってもらう場というのでしょうか。

刈谷恵美さんによるシンディー・ローパーへの手紙 デニムに刺繍で描かれている

フェミニストであることについて

瑠璃 : ジェン、あなたは以前、「人生のある時期は、とてもフェミニズムを親しく思い、ある時は距離を置いていた」と書いていますね。私も同じです。

小学生の時とてもフェミニストだったけど、大人になるにつれてなんとなく削がれて行った・・・。今また、あなたがフェミニズムに戻ってきたのはなぜですか?

 

ジェニファー : 実は、これというきっかけはなく、ただそういう時期だった、というか。もともとは大学に入った時、フェミニスト思想をベル・フックスなどの本によって学びました。

卒業し社会に入ると、その学術的な知識がいきなり、職場での男女の人間関係のダイナミクスやより大きな社会構造が見えてきました。でも一時期、5、6年前でしょうか、フェミニズムが私が日々戦ったり悩んでいる問題に対してなにも役にたたない、と思う時期があって・・・。なんというか、フェミニズムが一部の人だけのもので、排他的で、時々正義のヒーロー的すぎて・・。

でもここ最近女性に関することが色々身の回りにおこったりして、問題に取り組む時、フェミニズムがよいツールになると、また感じるようになりました。

 

ハンナ : 私の場合は、子どものときから社会問題を意識するように育てられてきたといえるかもしれない。ニューヨーク・マンハッタンで人生の大半を過ごしてきて、小学校はマーティン・ルーサー・キング牧師の思想に基づいた学校に通いました。人種や階級主義についての取り組みがカリキュラムに盛り込まれていて、ヒッピースクールでしたね(笑)。

でもフェミニスト的なことを考え始めたのって、12歳くらいの時に、体の変化ー胸が出てたころから。「ああ私は女なんだーそれはわたしにとっていいことなのか?どういう影響があるのか?」ということを考え始めました。

大学に入るとパンクバンドのコンサートに行くのにはまって、一緒に行ってくれる男の子達ばかりとつるんでいました。でもパンクコンサートでは、本当にもみくちゃにされている状態だった。

そこにビキニ・キルのようなバンドが出てきてすごく変わった!彼女たちは、「女の子は前、男の子は後ろ!そういう決まりだ!」といってコンサートを始めたの。それで私はいきなり、自分の仲間ができたような気がした。

 

 

ベル・フックスの著書

来場者は座って、手紙を書き、展示に参加することができる

瑠璃 : なんでまだフェミニズムは、必要なんでしょう?

 

ジェニファー : 一番問題にされるのはアメリカではやはり収入格差ですね。会社の上部やあらゆる仕事のトップは、みんな男。でも私は今、とてもフェミニズムが意味をもつところは、女性も男性も「女らしさ」や「男らしさ」にとらわれず、より広い領域での在り方を与えるということです。

例えば男は、「競争的で暴力的、孤立の精神」そして女は、「母性、やさしさ、自己犠牲」というとても狭い領域に閉じ込められてしまいがち。フェミニズムは今、女にも男にもより複雑な人として存在して、「らしさ」の役割にはまるのではなく、その人が持ちうる、機会や感情、経験をより豊かに育むきっかけを与えると思っています。

 

瑠璃 : 私は時々、「フェミニズム」というと「フェミ」がついているから男の人をよせつけにくく、他の言い方があればいいのにな、と思います。

 

ジェニファー : でもやはり、フェミニニティ(女性性)なんだと思います。ヒューマニズムなんていったら、過去や現在でもある男女差別や男性の主権といった問題を見逃してしまいます。世の中が男性性に溢れているから、フェミニニティを注入し、バランスを整える、という感じですね。

「フェミニズムは排他的だと感じる時期があった」という感覚は、私を始め多くの人が感じたことがあるのではないか、と思います。よくわからないし、難しそうだし、私とどういう関係があるの?という気持ち。

SHEROSの企画はフェミニズムの風通しをよくするような軽妙さがありました。その基盤には「みんなに気軽に参加できるものにしたい」という願いがこめられていました。「産んだ女」「産まなかった女」や「主婦」や「キャリアウーマン」といった差異ばかりに目がいってしまう時があります。そんな中、「フェミニズムはみんなのもの」と再度認識することで、私は多くの手に抱きかかえられているような、安心感や心地よさを感じました。(クラークソン瑠璃)

 

写真提供 : Jennifer Armbrust, Hanna Fushihara Aron,  Ruri Clarkson

聞き手 : クラークソン瑠璃 (アーティスト)

 

 

◆◆◆

この記事は、2014年11月11日、「ウィメンズアクションネットワーク」の「アートの窓」より再掲載されたものです。

元記事 https://wan.or.jp/article/show/572

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